無題


右のポケットには穴がある。
俺はどこに行くにも濃紺のツナギの作業服しか着ない
第一に俺にとっては戦闘服であり身分を証明する成りでもある。
着易い事と汚れが目立たない事 
ポケットに固いボルトやビスを入れる為に穴が開くが服を繕ってくれる相手がいないのでポケットに穴がいた場合でも裏の膝当ての部分にビスや小銭が溜まり路上までは落ちないのが気にいってる。

それほど気に入ってるのでまだ未着の作業服を5着ほど予備に取ってある。
 服には船底塗料や油汚れなどが付き回りの人に言わせると小汚い
けれどこれで行けない所は行かない事に会えない人には会わない事にしてる。
当然病院など汚れを持ち込んでいけない所は別だが

ケツには油汚れのウエスを入れ寒かったので油汚れの980円のジャンパーを羽織り超貧乏人風に税務署に行ったが 
俺は金欠貧乏人ではあるが弱者(じゃくしゃ)ではない
窓口の若者とのやり取りを衝立で仕切っていたが 風体のよろしからぬ奴が行けえば多少なりとも恨まれそうな役所は当然警戒モードになると思う。
上司は聞かない振りをしながら聞き耳を立てコイツの言う事は本当か 
どうすれば最善かを岡目八目で見る事になる。
そのうえで衝立の端から出てきました。 風格もよ~大親分という感じだった。
即断即決さらにコイツは字は書けないと瞬時に分かってサラサラ書いてまでくれる。

俺は思ったなんと辛い仕事かと 
これで官吏でなければ仕事が終わったら一杯酒でも呑みましょうと絶対に誘った、
男同士で美味い酒が呑める相手だと思ったが、
それはたとえどこかで偶然逢ったとしても官吏である限りは絶対に出来ない
こういう人ほど官吏公僕であるがゆえの一線をしいた内側の世界をきっと歩くのだろうと。
辛い仕事と思った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA