追いかけて雪国~(上)

以前からネットオークションをやっていて、売る側が匿名と言うことが凄く気になり、銭を貰うのだから最低限身分を明かそうと考えてやってきた。

それでもネット販売の場合は、やはり通常販売とはまったく違うのです。
どこが違うかと言うと、買って頂いたお客さんに、入金後に五段階で評価を付けるシステムになっている(YAHOOの場合)。
評価を付けるシステムが面白いと言うか可笑しいと言うか。  
これが店頭売りだとすると、銭を手にしてから

「非常に有りがたい~お客さんでやんした~」から始まり、

「まあまあのお客で~やんの~  」から、

「非常に嫌な 客でやん~の~」 とお客さんに言う感じであるが、

個人商店では絶対に言えない。 
言ったらブッ叩かれる。 できっこないと思う。

だが、まったくと言って良いくらい買ってくれる相手に会うことの無い現在のシステムでは、異常に警戒をするのも分からないでは無いが、誰が来るか分からない街道筋の婆さまが一人でやっている店もあるくらいなので、せめて食っていけるあいだは自分なりの考え方でやってみたいと思うようになり、現在に至っている。

暮れも押し迫った12月24日の夜、YSM560除雪機がオークションで落札された。 

第一報のメールは意外な内容だった。  
それは雪の降らない都会からであったが、落札した除雪機を奥能登に住む親元へ送って欲しいとのことだった。
きちっと簡潔な文面に、雪深い国にいる親に除雪機を買って送る子の気持ちが滲んでいた。

すでに24日以前から鉄枠で梱包して準備していたので、早速、いつも運んでくれる運送会社に発送手配をした。 ところがビックリあっと驚く為五郎!! 年内には着かないとの返事・・・。

除雪機とバレンタインのチョコは、時期を外すと貰っても有りがたくないのである。
ましてや除雪機は漬け物石にもならない。 ただ置いておくだけでも格納整備がいる代物で、銭が掛かるのである。
その点バレンタインのチョコは、14日を過ぎて貰うと「他の奴にやる物を回して寄こしたな」とは思うが、食えるので何とかなるのである。

除雪機を年内に届けるのは お新香を漬けるのと同じくらい大事な事なのです。 
なぜか? 
それは除雪機に関しては過去に販売台数全国No1になること数回の俺が思うに、実家では正月に里帰りをする子供達を迎える為に駐車場が必要になるのです。 
その為に12月の25日過ぎが販売のピークで、年が明けるとまったくと言ってよいくらい売れません。  

この「親も子も有るかい」と言う無情の世の中に、実家の親の為に買って送るということに感動した。 
何がなんでも年内着の約束は守らないといかんと思い込んで、鉄枠をバラシ、車に積み、内地行きの運送会社の車を追いかける事に。 

追いかけて~追いかけて~

そこに別のYT660除雪機が落札になった。 

直前の下調べで、最終落札者は長野県小布施のはずだった。 
俺は「こ~なりゃ~毒くわば皿までょ」ともう一台を積み込んだが、一発逆転! 送り先を見ると聞いたことが有る地名だった。 
「なんと士別でないか」。  
それまで最悪は奥能登まで片道1200キロを考えていた俺は、感覚が狂い、「なんだ~方角はまったく反対だがバイクでブイブイ言わせていた霧立ち峠の向こうでないか、70-80キロ位チョロい」と甘く考えたが、道中、添牛内(そえうしない)で凄い吹雪に遭い片道2時間も掛かってしまった。

士別は晴天だった。 
俺は大げさに、空ってこんなに青かったのかと思いながら走り、配達先に着いた。

がなんと!
そこの家には、なんの因果か能登隣県の富山ナンバーの車があった。
もうこれで運命は決まった。  
何が何でも奥能登に(年内に)届けろと。
しかし地元で請け負ってくれる運送会社は見つからない。