海水の海を越えて

久し振りに4サイクル140馬力エンジンで3日間72時間悩んで悩んで考えた。
永い付合いの立姿の綺麗なお姉さまに初めて仕事をしてる姿を見たと言われるくらい悩んだ。

陸上でエンジンを掛けるとすんなり始動してリミットスイッチを解除すると違和感なく吹け上がるのが
海上では一回目はすんなりエンジンは始動するが吹け上がる事は出来ない 数回後には始動すら中々しない
うん! こいつは海が恐いのかなと思ったのでクレーンで陸上に上げるとまたすんなり始動し吹け上がる。
なんかの間違えかとまた海上に降ろすと吹け上がらない また数回後には始動すら中々しない
それを繰り返す こうなりゃ~流されても海上で直すしかないと揺れる船の上で考え続けた。
陸上ではエンジン始動には真水を使うが海上は塩水なのでコンピューターが水の成分でも感知するのかと思ったり
こいつは1900時間超えなのでコンピューターがAI化してもう働きたくないと言ってるのかと思ったり
陸と海と何が違うのか考え続けた3日間だった。
最初はユーザーがなんかおかしいと言って来た時はまさかそんな事がある訳ねべ~と思った
まったくど素人はこれだから困ると思ったが 
自分で症状を確認した時は驚き 驚愕の事実にそこからは寝ても覚めても考え メーカーにも問合せて手持ちの資料をあさり読み続けた3日間だった。

そんなさ中にベトナムの食糧品がこれまた加減が無い量が送られて来た。画像はその一部

中には何も書いたものは無い 
まさかこれを全部俺に食えと言ってるとは思えんかった でも送り主の気持ちが袋に詰まっている。
送り主の普段の言動と人柄からするには俺が毎週顔を合わせるベトナムの子達に
即刻いますぐ持っていって食わせてやれと言う事なのだと忖度した 。

それなら早い方がいいと思ってすぐ近くの漁家で働くベトナムの子に一部をあげた
袋を見ただけで その喜び様はほんと凄かった あまりにも喜ぶのでまた戻って数を数えてさらにあげて
それから毎週行くホタテ漁家にいる子達にもあげる事が出来た。
なにせ大量だったので子供達にも漁師のオヤジにも送り主のベトナムに対する心情など少々説明が必要だったが
ブ~ラジャ~任務完了。

一人で生きてゆく決心をして初めて海を津軽海峡を超えたのが13歳だった。
津軽海峡、塩ょっぱい川を青函連絡船で渡った時にもう歩いては戻る事は出来ないと悟った。
あれから半世紀超え 気付く、気付かないも含めてどれほど人様の世話になった事か

殆どすべてと言っていいほど手を尽くしたエンジン眺めてコイツもそんな事を考えてるのかと思った。
悩んだ時は初心に戻れは修理工のイロハのイなのだが中々そうはいかない
わからん なぜ真水なら良くて海水ならエンジンが不調になるのか
ガソリンエンジンの始動には良い混合気 良い圧縮 良い点火 が三要素で
パソコンでECUの解析に掛かるが140馬力で1900時間使ったエンジンにしては綺麗なものだった。

画像は40馬力で参考 真ん中の黒いボックスがECU

このエンジンは優れものでパソコン以前にタコメーターに異常を知らせるランプとブザーがありユーザーが気付かない事は珍しいので
どっちにせ燃料系と判断して殆ど全部分解してみたがこれだと言うのは発見されなかった。

思えば天職ではないと思うが修理工になって半世紀ほんとうに良かったと思っている。
もし修理工をしていなかったらと思うと恐い
この仕事は目の前の現実を見る それも色々な方角から見て考えて予習をしてさらに考える。
不確かな事や情報には取り付かれないようにしその中から今ある故障の原因を探し対処する。
それは修理工になった一番最初に教わった。

72時間考えて直ったが今回の原因は4サイクル特有の原因だった。

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