とん寝る

今から25年ほど前の国道231号線は千代志別から雄冬間は夜間通行止めになり
時間に間に合わなければ一度浜益まで戻り国道451線を走り滝川経由で来なければならなかった。
その時に15歳の男の子をトラックの助手席に乗せて石狩からここに戻る最中だった
閉鎖時間には間に合わないのかも知れないので石狩から当別を走った方がいいのだが
目的があって231号線を千代志別に向かい走った

ある地方の都会でどうやって生きて来たのかと言う生活をして来た子は突っ張って突っ張って暴力と非行で生きて来た
その子と夜のトンネルを歩いて見たかった。
当時は厚田から増毛100キロ間は20カ所ほどのトンネルがあり途中のトンネルに女の幽霊が出ると言う噂があった
若い頃に東名高速道路三ケ日から新城間のトンネル建設機械の整備工をやっていたのでトンネルはどんな物かはおおよそは知っていた。

千代志別トンネルに着いた時点で時間切れでゲートは封鎖されていた当時は雄冬まで総延長5キロ間に4本ほどのトンネルがあったが現在は浜益トンネルとタンパケトンネルと名称が変わり途中はカルバートで繋がれほぼ一本のトンネルと言っていい
千代志別ゲートに車を乗り捨て会社の若い子に雄冬まで向かいに来いと言い
幽霊や死後の世界などまったく信じていない俺は怯えるその子と1本目の千代志別トンネルから二人で歩き始めた
一本が1キロほどありトンネルとトンネルとの間に満点の星空と暗い海に操業してる漁船の漁火が見えていた

自分を大きく見せる事でしか生きて来れなかった小さな子の話を沢山聞いて星の話や海の話など沢山話をした
最後の雄冬トンネルで俺のお願いを言った
これからの人生何があっても自分より弱い者には手を掛けないで欲しいとお願いをした
雄冬トンネルを抜けるとナンチャラ組をすでに卒業した若い子がゲートで待っていた
帰りのブルーバードの中で
眠そうな半眼の太った女が立っていたと言い怯えさせた
眠そな太ったトン児はトン寝る
いまは何処に居るかわからないがテレビにも新聞にもその名を見る事はない

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