第二話 ラーメン店の設備の話

設備で迷った時は、自分の回りから不必要なものをそぎおとした、屋台があります。
あれこそが、設備も動きも究極の見本かと思います。 設備は少なければ少ない方が、掃除も楽で、清潔に出来ます。 ラーメンしか知りませんが、設備はお金さえ有れば真似することも出来ます。 ただし、屋台は誰でも出来るものでは無いような気がします。
商売は「一に押し、二に押し、三に誠意、四に泣き落とし」と行きますが、屋台は背中で作ると言うか、人そのもので作ると言うか、総じて貫禄の有る方が多く、それなりの人生経験が必要と思います。 それ以外の方には少々難しい気がします。
同じ時刻に同じ場所で風雪に耐えて、その小さな設備で続けていくところで、ラーメンを食べる者にも通りすぎる者にもその赤提灯を見ると、また明日から頑張ろうと言う気にさせてくれる貴方が希望の星なのです。

俳優さんで一流という方はなぜかラーメン屋の親父が似合います。
健さんのムッツリと斜に構え無愛想に出すラーメン。
小林稔侍の揉み手をしながらも目は笑わないで出すラーメン。
緒方拳のニコニコしながらもしっかり目を見据えて出すラーメン。
どの俳優さんも、ラーメン屋の親父が似合うし美味しそうでしょ。
今売り出し中のSMAPの中井君では、何となくラーメンが伸びる気がします。
若手でラーメン屋が似合う俳優さんがいますか?
逆に、今世紀最大の、この人はラーメンを作っても絶対に似合わない、美味しそうにも絶対見えない。 ラーメンを語っても、いらないと言うワーストワンは、、本人は大層ラーメン好きらしいですが、この線は誰でも日本国民なら異論はないと確信します。 じゃ~ん! それは小泉首相です。 もし自分で店を出したら、半年も持たないでしょう。
政治家は務まっても、ラーメン屋は勤まらないのでは・・・。
こう考えますと、ラーメン屋には、やはり言葉でなく貴方自身の人生経験がどうしても必要な気がします。
どうでしょう、貴方の今までの人生がラーメン屋の一番の設備だと思いますが。

作り手が真剣に作ったから、食べる方も真剣に食べてくれと店に書くのは疑問を感じます。
子供さんを連れて泣かせながら食べようが、鼻水垂らして食べようが、そこまでしてお客さんが食べてくれれば良いとしなければならないと思いますが。
その為に、ラーメン店にはティッシュの箱が備え付けてあるのです。
あまりの美味しさに、感激して泣くためにあるのでは有りません。
これがフランス料理のレストランでしたら、子供が泣けば「うるせい~ガキ」と思いながら、フランス料理の名物オイスター、日本名カキなどをベロ掛けして、ぶきっちょな西洋人がナイフとホークでグサッ、ガッキと差し食べるのですが、マダムもムッシュも食べている最中はなにせ両手に凶器ですから、切れた時は怖いので、そう簡単に声は掛けられません。
食い物の恨みが恐ろしいのは万国共通ですが、ラーメン屋は、同じカウンターに並べば、隣でガキが泣けば割り箸でチョキチョキなどをして機嫌を取ることも出来ます。そこには同じ釜の麺を食う的な、温かいやりとりが生まれるでしょう。ラーメンとはそういう食べ物です。

話は変わりますが、10席から15席で、厨房設備は最低予算100万で以下揃えることが出来ます。
まず寸胴が必要になりますが、寸胴がなければドラム缶でもいいわけで、稚内の声問の手前にドラム缶ラーメンと言う店があります。聞くだけで美味しいそうでしょ。ただ、今は寸胴も安く買えますので、扱いやすい寸胴が便利と思うのです。 そこで寸胴の見方です。 寸胴は縦も横も大概は同じ寸法ですから、海栄の計算方法は新しい余裕の教育方針とやらに従い、直径×直径×三×縦÷四=容積です。寸法はセンチで計算します。
一杯のドンブリに400CCですから、400で割ると杯数がでますが、このさいπは3.1415926などと正確にしてもなんの意味もありません。別に月に出前に行くわけではないので、軌道計算も関数計算も必要ありません。
ちなみに、ラーメンドンブリを逆さにして関数計算をし、y=2Xで放り投げ、ぼやけた写真を撮ると、中国上空を飛ぶUFOです。ではドンブリならなんでも良いかと言うと、そうでは有りません。ソバドンブリでも、天丼のドンブリでも駄目です。まして洋皿にいたっては、逆さまにしたら中身のない貧弱さを感じます。やはりUFOは、ラーメンドンブリを逆さにして空を飛ぶと、一番さまになるのです。
いつか、ラーメンドンブリの正立した写真が、アメリカ連邦航空宇宙局NASAの壁紙になることを夢見て、ラーメン屋は頑張ろう。BGMは当然お約束の郷ひろみのアッチチアッチチですね。
話はもとえ。
なぜ大雑把が良いかと言うと、天然材料を使うと均一などには決して出来ませんし、近づけることは出来るでしょうが、いつも同じ事はあり得ません。 たとえば鶏ですが、若いバリバリの鶏もいれば、寝てばかりの鶏もいます。どちらかと言うと、寝てばかりの鶏が美味しそうです。 大体の方角も決まりましたら、あとはひたすら走るのみのような気がします。 長い時間の中で、紆余曲折を少なくする事がプロの技なのかも知れません。
てな訳で、まあまあ寸胴は適当に計算してください。

次はガス台ですが、スープを取るにはあまり大きなガス台は必要ありません。麺を茹でるのは、大きいガス台がすぐに沸くので便利かと思います。 留萌の繁華街に、夜だけ営業している「時よし」と言うラーメン店が有りましたが、そこのおばちゃんはお客さんが来てから湯を沸かしていました。それはそれで、お客さんが納得すれば良いことで、なんの問題もありません。 今はどうしているのでしょうか?  店の明かりが消えてからもう10年以上になります。 ラーメンを作り出し終えると、蛍光灯の下の椅子にチョコンと腰掛けていたのを思い出します。

スポーツを経験した方なら分かると思いますが、ハードルは極限に近くなると、あと僅かが出来ない。だが極限を経験した者だけが、その僅かの身を引くことで、何倍もの余裕が生まれます。 引いてこそ浮かぶ世もありですか。