ラーメンは、中に熊の手が入っていようが、フカヒレが入っていようが、毛ガニが一匹丸ごと入っていようが、ラーメンの作り手がラーメンと名付ければどんな味でもラーメンです。
そこにラーメンの猥雑さと、清濁併せ持つ器量がラーメンにもラーメン好きにも有るような気がします。 ラーメンを食べる人も、美味い美味くないではなく、自分の口に合う合わないと考えるべきだと思います。
テレビで見るような、ラーメン修行のために今まで生きてきた事や人生を踏みにじられるような、そんな思いをしてまで覚えるほどの物ではありません。
ラーメン作りを伝授すると称し、怒鳴り続ける師匠・・・。 あれは勘違いです。
教え方が下手なのです。 それで味に異論があるときは、お客さんが行かなくなるだけのことだと思います。
どんなものでも日々進化してこそと考えています。 今のラーメンの味に満足をしてはいませんが、中一段落と言うことで生意気ではありますが。
海栄ラーメン本家の作り方を。
まず、前日から増毛の暑寒別岳から流れ出る水を36リッター、寸胴に張ります。
この水は、増毛に日本最北の造り酒屋があることからもわかる通り、水量は大変豊富であり、また美味しいのです。 その訳は、上水道の水取り入れ口より上流に、人が住んでいません。 その水にその辺の北海道コンブの端切れを入れて、一晩寝かします。
それに、鶏ガラ10羽と豚骨を10本と椎茸を入れ、強火で沸かします。そのとき、ガス代が勿体ないので蓋をします。 ふたをするとガス代は半額になります。
鶏ガラは色々試しましたが、留萌近辺では駅前の老舗問屋「かねもり」のトリガラと豚骨が一番だと思います。 鶏ガラは、空を飛ぶだけあって寸胴の中でも上に浮きますから、焦げる心配ありません。 ところが、豚は見てからに浮きそうにありませんし、実際に鍋の底から浮きませんので、豚骨が焦げ付くのを防ぐ為に、時たまかき混ぜなくてはなりません。
沸騰してきたら、中のコンブは取り出します。 このまま7時間煮て、火を止め、二日間寝かせて完成です。
これに、増毛スズラン通り「石山精肉店」のおばちゃんからもらった豚背脂を丹念に火にかけて作ったラードを、お好みで営業時間の最初に入れます。 ちなみに、スズラン通りの石山精肉店のオバチャンの家は、築100年を超えているそうです。 ジンギスカンを買いに行くと、家よりは少し若いオバチャンが目の前で希望の厚さにスライスをしてくれます。 これがまた美味しいのです。 他にも色々なおばちゃんのオリジナルがありますので、是非、お立ち寄り下さい。
タレは、醤油、他をブレンドして作ります。
そのタレでチャーシュを作りますが、そのままでは濃すぎますのでラーメンスープで薄め、約二時間バラ肉を煮ます。
ドンブリにタレを入れ、割と簡単に出来たスープですが、速攻では出来ないのでせこく最低限の400ccをドンブリに注ぎます。
麺は、留萌のフタバ製麺が作った縮れ麺をやや固めに茹でてドンブリに入れ、シナチクとチャーシュを乗せ完成です。お客様に出すときは一呼吸置くと、さらに美味しく感じます。
毎日同じことの繰り返しの中で、なんと言いますか、日々鍛錬が日々の進化になると言いますか、段々と美味しくなります。
昔、ラーメン屋や食堂は残った残飯を豚屋さんにあげ、豚屋さんはそれを肉屋さんに売り、ラーメン屋は近所の肉屋さんから貰ってきた、鶏ガラと豚骨でスープを作るのでした。 お返しに肉屋さんはラーメンをタダで食べられる、そんな地域循環がなされてきました。 ラーメンはそういう食べ物なのです。 そして誰でも美味しく作ることができ、家族の味があるのです。 だからこそラーメン店は、三ちゃん営業(父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃん)で営業が出来ると思います。 三ちゃん営業の聖域なので誰も犯してはなりません。
年金も貰えない、会社も無くなるといった先の見えない混沌としたこの時代だからこそ、最後の希望はラーメン店なのです。
家族が元気で揃って居たら、ラーメン店があるさ!
売り上げが無いときはラーメンを食べれば良いわけで、他の商売からみるとそこに大変なメリットがあります。
次回は設備のお話を。