29日午前0時青森着。
走りに走って、午後10時氷見に着く。
氷見の道の駅で、積んでいるヤマハ除雪機に足を掛けて車中泊をする。
翌朝、奥能登を目指して再度走るが、道中、車が放棄してある。
どれも夏タイヤで、雪に囲まれ走行出来ないのだとわかる。
除雪も充分でなく、片側一車線しかなく、それでも北海道からみると走行にはたいして不自由はせずに走った。
さりげなく旭川ナンバーの雪を払い、それ行け~珠洲ホタテ町を目指して。
夜明け前の暗いうちでも、浜に生きる俺は海岸を走ることには慣れているのである。
右が海、正面に見える明かりを頼りに走ればよいのである。
いかに便利なGPSの時代であっても、海を行く者は灯台や明かりが心強いのである。
暗闇に見える先の明かりは銭や金の理屈ではないのである。
正面に見える明かりを目指して、 それ行け~。
川尻を過ぎた辺りからおかしな事に気づく。
道がどんどん狭くなり、なかなか正面の明かりが近くならないのである。
そのうちに漁港で行き止まりになった。
あとで知るが、観音崎漁港である。
まだ暗い海から戻った、かなり年配の10センチほどの小アジを獲っていた二人乗り込みの夫婦船の、腰の曲がった婆様に道を聞く。
婆様は左手のゴム手袋の親指と人差し指で輪っかを作り、
「あんたが居るのはここだ~ 」
と、右手人差し指で左手の親指のツメの辺りを指すのでした。
その時に、微妙に親指と人差し指をわずかに数回離すのでした。
「あんたの行く珠洲のあいだには能登島があって、湾ドになってる」と説明してくれた。
そうか、俺は湾になっている(輪っこになっている)人指し指と親指は繋がってないのだと、対岸の明かりを目指していたのだと気付いたのでした。
また七尾まで戻らなくてはいけません。
近くで犬の散歩をしているオヤジさんに聞くと、ここではきっと誰もが知り合いで助け合って生きていくので、行動もみな知っているのでしょう。
「あの軽トラックに着いていくと七尾に行く」と教えてくれるのでした。
そこから七尾に戻り、また走りに走り珠洲ホタテ町に。