追いかけて雪国~(上)

12月28日、午前10時に増毛を発つ。  
運転席に乗り込んでここでビックリ!
最悪能登行きを覚悟し、燃える俺に対する励ましか、なんとシガライターから電源を取っているCDラジカセが燃えているではないか。  
俺は冷たく、自ら燃えて励ますCDラジカセを雪にブン投げて、その時にオリヤ~と雪駄も片足一緒に投げたのを気付かずに旅立った。

クソ眠たいのを我慢して午後5時に函館に着く。

まずは運んでくれそうな運送会社を探す。
松岡満運輸に断られ、札樽運輸に断られ、そしてトナミ運輸にも。
これはやはり自分で海峡を渡るしかないと、東日本フエリーの乗り場へ。 

20時発のフェリー乗船まで時間があるので、暖かい待合室で作業服のまま仮眠を取った。 
しばらくして目が覚めると、隣にヌボーとした、白い雪によく似合うラップランドのヘラ鹿に寒そうなウインドブレーカーを着せた感じの白い顔の親父が座っていて、
「おじさん どこ行くのー」と聞いてきた。 

オヤジにオジサンと言われたくないわいと思いつつ「能登に行くと」と言った。
オヤジは「自分を乗せていってくれ」と。
いそぐ旅なので丁重に断ると、今度は札幌まででいいから乗せていってくれとの事。
これまた反対方向なので丁重に断った。 
何かしら訳が有りそうなので聞くことにしたが、
「何か困った事があるのでしたら、函館西署には知人で文ちゃんの父上がいるので頼んであげましょう」と、これまた珍しく丁重に言ったが、  
寒そうなウインドブレーカーを着たオヤジは、ポケットに手を入れたまま背中を丸めて立ち去って行った。
これだけ沢山、他に人がいるのに、俺に声を掛ける。 
俺はけっして愛想のいい顔でないのに、同じ臭いを感じるのだろうか。 
「オヤジ、無職だって消費税払っているのだから、困った事あったら立ち直るまで国の世話になって胸張って生きてくれよ」と後ろ姿に思った。 
フエリー待合いロビーに張ってある、「ホームレスお断り」の愛想も素っ気もない張り紙が、昔の救世軍の社会鍋を懐かしく思い出させた。